2019年6月7日にトヨタ自動車から今後のEV戦略について発表会がありました。
今回のトヨタ自動車のEV戦略について思う所と、同時に発表された超小型車について考えてみたいと思います。
2020年代前半には10車種以上のEVをラインナップ
今回トヨタでは2019年4月16日に開催された上海モーターショーで発表されたEV版「C-HR」と「IZOA(イゾア)」と呼ばれる姉妹車を中国で2020年に発売するのを皮切りに2020年代前半にはグローバルで10車種以上のEVをラインナップすると発表されました。今まで発売されると言われていた100%電気自動車がやっとトヨタから発売されるようになります。今までHVやHVベースのPHEVばかりのラインナップに加え、もともと「MIRAI」で100%モーターを使って走行させていたので、技術的にはいつでも発売可能だったのでやっと発売と言う感じです。「C-HR」はもともとプリウスのシャーシを使っているので今後色々な車種への展開も残した感じになっています。今回はモックアップですが、数車種の電気自動車も展示されていたみたいでトヨタ自動車の本気が見えます。インタビューでも電気自動車においては遅れていることは認めていますので、一気に巻き返しを図るつもりだと思います。
2020年に小型EVを発売
今回の発表でこのサイトで注目すべきは2500mm×1300mm×1500mm(全長×全幅×全高)というサイズで2名乗車が出来、最高時速60km/h、航続可能距離約100kmとされている超小型車になります。トヨタ自動車から初めて具体的に発表された市販型の超小型車電気自動車です。
絶妙なボディサイズ
今回発表された超小型車ですが、ボディサイズは2500mm×1300mm×1500mm(全長×全幅×全高)この全長・全幅サイズはなんと現在のミニカー登録の最大値になっています。コムスの2400mm×1100mm×1500mm(全長×全幅×全高)より一回り大きいサイズになります。しかし現在のミニカー登録で発売したときには2名乗車は認められていませんので、現行のミニカー規格で発売されると一人乗りと言う事になります。コムスのシートの横幅は実測で440mmになりますので、同様のシートであれば左右のクリアランスは220mmになるので狭いですがギリギリ二人でも乗れる計算です。軽自動車は3400mm×1480mm×2000mm(全長×全幅×全高)ですので軽自動車より大分小さくなります。特に全幅が1300mm以下の場合は保安基準の基準緩和において特例が認められるのでこの絶妙なボディサイズは後述する新しい規格にも関係されると思います。
動力性能について
今回主要諸元まで発表されていませんが、発表内容が最高時速60km/h、航続可能距離100kmであることを考えると最低でも現在のコムス同様の5kw程度の最高出力を持ったモータであると思われます。コムスの2名バージョンがギア比の変更により最高時速が通常の60km/hから50km/hに抑えられている事を考えるとひょっとしたらもう少し最高出力が高いかもしれません。航続可能距離100kmであるという事ですが、ボディサイズを考えるとコムスの鉛バッテリーを使ったものではなくリチウムイオン電池を使用している物と考えられます。リチウムイオン電池が採用されている「biro」の固定バッテリータイプが同様のスペックになっています。
超小型モビリティとして市販されている物はあまり多くありません。我が家で所有している「コムス」、タケオカ自動車工芸の「ララ」、あとは今回紹介する「BIRO」ぐらいでしょうか?範囲を広げてみると小型ジープの「ネクストクルーザー」やカートを改造し[…]
安全デバイス
最近の高齢者の事故を受けて安全デバイスを投入してくるものと思われます。会見の中でもそのことが触れられていることを考えれば自動ブレーキを標準装備として投入するかもしれません。すでに小型自動車でも設定があるので十分可能性があります。
価格について
今回価格については述べられていませんが、普及を促すためには100万円台である必要があると思います。同じリチウムイオン電池を採用する「biro」が乗り出し価格170万円~200万円なのでこの価格ぐらいが妥当だと思います。コムスが90万円ぐらいですので大分高価になると思いますが、内容次第では十分売れるのではないかと思っています。
超小型モビリティ規格の新設か?
今回注目すべきポイントはわざわざミニカーサイズに合わせて超小型車を発表したことです。これはミニカーと軽自動車の間に新しい規格が作られるのか、それともミニカー登録を改正してくるのかが注目されます。軽自動車規格の場合衝突安全基準が適用されるので、今回発表された大きさではクリアすることは難しいと思います。トヨタ自動車が利益を考えずこんな中途半端な自動車を軽自動車規格で出すわけはなく、元々政府が描いていた2020年に超小型車を量産できるようにするというロードマップとも合致しているため何らかの規格に関する発表があるかもしれません。何せトヨタ自動車が参入することのインパクトは計り知れなく、日産自動車ではもうすでに「日産ニューモビリティコンセプト」として2011年から実証実験を行っており、完成度も高いものが既にあります。こちらは最高出力が15kwとコムスの3倍程度の高出力ですので、そのままでは無理でしょうが、二人乗りという事を考えて最高出力の緩和がされた場合、インバーターの設定を変えれば他に手を加えることなくそのままでも発売出来ると思います。本田自動車にしても撤退したにせよ超小型「MC-β」を社会実験用に製造していたところを見ると発売されてもおかしくはありません。
元々欧州では「クワドリシクル」と呼ばれる超小型車が数十年前から走っており、今回のトヨタ自動車の超小型車も当てはまるサイズになっています。世界を見渡せば同じような超小型車の規格があり、日本の軽自動車が逆にガラパゴス規格なので、日本での発売を機に全世界車として販売するかもしれません。
まとめ
HVの特許を開放した次にEV戦略の発表会、今回のトヨタ自動車の本気が見ることが出来ました。合わせて数年前から実証実験を繰り返した超小型車にとっても2020年と言うキーワードが色々な所で一区切りだったので、今回のトヨタ自動車の発表については絶妙なタイミングと超小型車の新しい規格について一歩前に進んだ期待が持てる発表だったと思います。